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1on1が上手く機能していない会社が検討すべき別確度のアプローチ

1on1が上手く機能していない会社が検討すべき別確度のアプローチ

1on1の社会的な潮流

近年、働き方改革や人材マネジメント手法の変化により、上長と部下が1対1で定期的に行う面談「1on1」を導入している企業が増えている。アメリカのシリコンバレーを中心に人材マネジメントのツールとして根付いている「1on1」であるが、日本における導入事例としてはヤフーが成果を出している事例として有名であろう。こういった事例を基に、各社が「1on1のコツ」や「成果を出す施策/仕組み作り」について発信しているが、実際は1on1を導入したものの上手く機能していない会社も多く、1on1の定着化に四苦八苦されている人事担当者も多いのではないか。

弊社としては「1on1 のコツ」を闇雲に取り入れても中々成果は出づらいと考えており、本コラムでは「1on1のメカニズム」や「その阻害要因」を深堀りすることで、1on1を定着化させ、成果を出す方法をご紹介する。

1on1が上手くいかないのは何故か?

1on1が上手く機能しない要因は組織ごとに様々考えることはできるが、いくつか具体的な要因を見てみよう。

まずは、「上司/部下が1on1の有用性を理解していない」、「上司が忙しく時間を十分に取れていない」、などの1on1を行う環境自体が整っていないケースが考えられる。次に1on1を行う環境自体は整っているものの、1on1における時間の使い方が適切でないというケースも考えられ、具体的には「1on1の時間で上司が喋り過ぎている」、「業務の進捗管理しかできていない」、「ネガティブなフィードバックが多い」、「上司が部下目線に立てていない」、「ネクストアクションが明確でない」などが挙げられる。最後に「上司・部下のそもそもの信頼関係に問題がある」、「部下のモチベーションが著しく低い、無気力である」など組織風土や個々の人間関係、個人的な問題に紐づくような、そもそも1on1導入以前の課題も考えられる。

これに対する解決策として、「1on1の制度化」や「1on1の目的説明」「上司への1on1スキル伝達」などの表面的な「1on1を定着化させる施策」だけを考えても中々成果は上がりづらい。

それでは、こういった種々の問題の根底にある「1on1が機能しないメカニズム」に着目したい。

1on1が機能しないメカニズムと対応策

前述した「1on1が上手く機能しない要因」を整理すると、1on1への向き合い方(=マインド)と1on1の実施方法(=テクニック)、それ以外の3つが重要要素と捉えることができ、このうち「マインド」の部分をもう少し深掘ることで「1on1が上手く機能しなくなるメカニズム」を理解することができる。

[1on1が機能不全に至る典型的なメカニズム]

①1on1が制度化されると、まずは上司・部下共に1on1に取り組む

②1on1を導入してもすぐに成果(部下のパフォーマンス向上、等)が出るわけではなく、有効性をあまり理解できない

③成果が出ないことに加え、業務の多忙さなども相まって、徐々に1on1のモチベーションが下がっていく

④次第に内容が形骸化したり、リスケが続いて時間を割かなくなったりするケースも現れる

ここで注目すべきは②の部分であり、通常1on1を導入してすぐに効果が出るケースは少ないが、それは上司の1on1テクニック的な側面だけでなく、そもそも「部下が1on1を通して成果を出す(=成長を実感する)までのプロセスには長い時間(最低半年以上)を要する」という点に起因することが多い。そもそも1on1の有効性に懐疑的であったり、即効性を過信していたりすると、通常業務で忙殺される中で成果を感じられず、継続的な1on1の時間確保とモチベーション維持が困難になり、道半ばで脱落してしまう(中身の形骸化やリスケの繰り返し、など)ケースが多いのではないだろうか。

上記のようなメカニズムを踏まえると、上司に1on1のテクニックを教えることも重要だが、そもそも「1on1を導入して成果を実感できる(=有用性を理解できる)までには時間を要する」という構造を上司・部下共に理解させることが非常に重要となる。それに対して人事部が取り得る具体的な施策としては、「上司・部下の1on1後の相互フィードバックを仕組み化して満足度を可視化する」であったり、「部下の小さな変化を読み取り、それを小さな成功体験と捉えて根気強く継続することの重要性を説明する」などが考えられる。

また、上司・部下のそもそもの信頼関係に問題がある、部下のモチベーションが低い(上がらない)などの要因に関しては、そもそもの組織文化や風土、組織内の人間関係が根底の問題となっているケースが多く、1on1の施策に留まらない抜本的な問題解決策を検討する必要がある。

弊社の提言

「1on1で目標設定・管理をしたい」「1on1を通して従業員のエンゲージメントを高めたい」「部下のキャリア開発支援をしたい」など1on1を導入する背景には組織ごとに様々な目的があるが、前述のように、どんな目的設定に対しても表面的な「1on1を促進する施策」を導入しても必ずしも成果が出るとは限らない。重要なことは「1on1で成果が出るまでの時間軸」を理解し、「自社において機能不全を引き起こしそうなポイント」を事前に特定して取り組むことであり、人事部としては大局的な視点から「1on1」を機能させる仕組み作り」を検討する必要があるのではないか。

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